夜空は嘘をつかない

難しいことは後回し

コンパスの針はぐるりと回り、それでも旅は続いてゆく

 

 

生きていたくないと思っていたはずが長い道のりを経て今では「生きている自分を信じている」と思えるようになった。と気づいたのはごく最近のことだ。

 

人を信じることが怖かった。親しくなって相手に自分のことを褒められて、とてつもなく死にたくならないか怖くて仕方がなかった。だから推しに長らく名乗ることもできずその距離が縮まることを恐れていた。好きなのに恐れながら特典会に足を運んでいた。そのはずだったのに、ひとつひとつ丁寧に重ねた時間の中で自分を認められるようになって、褒められることを素直に受け取れるようになった。何より推しが向けてくれるその眼差しと言葉が嘘偽りないもので、自分の感じたまま受け取っていいのだと心から思えるようになったことが大きい。

そもそも誰かの人生の登場人物にはなりたくなかったし、才を認められたくなかった。褒められすぎて歪んだこの価値観は人生リセットしなければ変わらないだろうと諦めて日々を眺めていたはずなのに。いつからどこから心の風向きは変わったのか未だにわからないけれど、この出会いが1番のきっかけであることは確かだ。たくさんのきっかけを与えられて、拾い集めて、そうして見出されたのが今の自分であるならばこれを幸運と呼びたい。

人の役に立つ人になりなさいという声を繰り返し聞いてきて、まるで今の自分では生きているだけでは何の役にも立たないのかと傷ついてばかりいたけれど。自分のために生きて、誰かを愛して、その誰かに恥じない自分でいるために目の前の出来事に誠実に向き合って、いつかその誰かに届かなくなる日々の中でもその自分で居続けようと誠実さを忘れずにいることが"人のために行動する"ということなのだろうと今では思っている。これが世間的に正解なのかはわからないし、純粋な奉仕の精神では決してない。だけどもこれは私がこの日々の中で見つけた確かな道標なのだ。

 

出会ったころの日々に抱いていた言葉とはまるで違うものを今では抱くようになったけれど、これは悪しき変化ではないと胸を張って言える。正反対と言えるほど私のコンパスは違う方向を指すようになったけれども、いつか船を降りたとき、まるで航海記のページを捲るようにこの日々のきらめきを思い返せたら嬉しい。願わくばあなたの航海記のどこか輝かしい1ページに、私が登場できたらこれ以上はないだろう。少なくとも私のそれには、既に多くのみんなが登場しているから。

変わりゆく世界の中で、変わらないものをきっと見つけたい。あなたと私の関係性が変わりないものであることをただ信じたい。

あなたも私も、そのコンパスの指し示す方向が、進む道が分かれようともこの旅は続いてゆく。どの道も幸多からんことを願うばかりだ。それでも今はまだ、手を取り寄り添い進んで行けたらいい。

 

 

MeseMoa.の日 おめでとうございます

溢れんばかりの感謝を込めて

2023.8.16

 

 

 

 

 

自分の価値観が自分でも驚くほど変わったこととアイドルを卒業するメンバーがいることを重ね合わせてこのタイトルにしました。卒業を選んだメンバーのコンパスが狂ってしまった、その人の考え方がガラッと変わってしまったという意味合いでは決してないことをここに書いておきたいです。その人自身の最も根底たる軸、即ちそのコンパスの指し示す方向は変わっていないだろうけど、職業だけに着目するとアイドルとしての道を指していたそれが別の道を指すようになったことを表すべくこの表現を使っています。本文中にもあるように変化を全て悪しきものと捉えず受けとめたいという、私として肯定的な意味合いです。とはいえやはり寂しいけどね。